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再生式受信機の調整要領

昔のラジオに興味を持つ方々が増えているように思われます。
私のホームページをご覧頂いた方々からも修理の依頼や回路の質問などが寄せられてきますが
放送を聞くためのダイアル操作が良く分からず、宝の持ち腐れ?になっている方も居られるようです。

ここでは下にご覧頂く4球再生式受信機を例に
放送を聞くためのテクニックを紹介します。


 Z-20型 ナショナル国民受信機 
Z-20型ナショナル国民受信機
薄暗いダイアルはラジオの象徴!
Z-20型ナショナル国民受信機のダイアル
当時のパイロットランプはこのように大きな球でした。
Z-20型ナショナル国民受信機のパイロットランプ

Z-20型 ナショナル国民受信機は
”昔のラジオ”の典型のような4球ラジオ、別名 ”並四”です。


”並四”なる名称がいつ頃から使われ始めたのか議論の分かれるところですが、
私は”戦後に表れた”の意見に賛成です。


昭和3年にスクリーングリッド付きの高周波増幅に適した4極真空管224がRCAから発売され、
翌昭和4年には国産化されましたので、日本でも早い時期から
高周波増幅付きの高級受信機が現れました。
同じ4球ラジオでも、高級な高周波増幅付きラジオ ”高一” に対して
高周波増幅無しの4球ラジオを ”並四” として区別されるようになったのでしょう。


蛇足を一つ
大正末期のラジオは201などの3極管で高周波を増幅していましたので
スクリーングリッドが発明されてから高周波増幅が始まった訳ではありませんが
4極管が出来て高周波増幅の性能が飛躍的に高まったので
改めて高周波増幅が強調されるようになったのでしょう。


Z-20型ナショナル国民受信機裏側

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再生式ラジオ受信機の調整要領

Z-20型ナショナル国民受信機名板Z-20型ナショナル国民受信機ツマミ

選局の主役は同調用の”コイル”と”バリコン”ですが、
再生式受信機で遠くの放送を聞く場合、”豆コン”を調節することが重要です。
大抵の場合、”再生のツマミ”に目盛は無く、ぐるぐると何回でも回りますが、 中には小さな可変コンデンサ(これを豆コンと称します)が入っています、 調整に必要な回転角度は180度です。
バリコン
豆コン


同調の主役はコイルと可変コンデンサ



バリコン


再生の調整は豆コンの

微妙なテクニックが必要



豆コン


先ず”豆コン”を回すと、”ピュー〜〜”と
笛を吹くような音がします。 
この状態を”再生のかかった状態”と言います

この状態でバリコンを回すと
近くの放送は大きな音でピュー〜〜と鳴りますし、遠くの放送は小さな音でピュー〜〜と鳴ります

もう少し詳しく説明すると、再生のかかった状態で、選局ツマミを一定方向にゆっくり回していくと、
ピュー〜〜音が、高い音から低い音に変って行き、ついには低いうなり音になりますが、
更に同じ方向に選局ツマミを回して行くと、ピュ−音は低い音から高い音に変って行き、
次々と同じような状況を繰り返します。

ラジオ放送を受信できる位置はこのピュー音の谷間にあります

選局ツマミを一定方向にゆっくり回しながら、中間くらいの大きさのピュー音を探し、
笛音の谷間に選局ダイアルを止め
再生調節をゆっくり回していくと放送が徐々に大きく聞こえるようになり、
笛音の消えたところで再度選局ツマミを微調整すると、
そこが最も大きな音量で放送を受信できる位置です。

一度受信できた局はダイアルに印を付けておくと次に聞くときの目安になります。


Z-20型ナショナル国民受信機回路図



このセットの目だった特徴
 回路を見ると分かる通り通常はコイルを通してプレートに電圧をかけるところを
抵抗とコンデンサで、直流の高圧を遮断しています。
この時期のラジオは故障が多かったのですが、故障原因の横綱に低周波トランスの断線があります。
通常の回路では巻き線に直流の高電圧がかかるので
日本のように湿気の多い国では吸湿したトランスの内部で電気分解が起こり、
巻き線の銅が解け出して断線してしまうのです。
このセットのような回路構成にすると、音量は若干低下しますが、格段に故障しにくくなります。
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低周波トランス一次側の途中からタップを出して26Bの陰極に
ネガティブフィードバックをかけています。
この時期のセットのスピーカは、ほとんどが”マグネチック”なので

マグネチックスピーカ

硬い独特の音がしますが、ネガティブフィードバックによって
格段に音質が向上しています。
故障防止のために巻き線の直流を遮断したので、このような改善も可能になりました。
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下の写真でご覧頂ける通り、電源トランスが”割りピン”で固定されてます。
組み立て工程の簡略化と部品代の節約を考えたのでしょう。
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これ以外にも随所に創意工夫のあとが見える素晴らしいセットです。
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Z-20型ナショナル国民受信機
パワートランス止めピン
パワートランスを割りピンで止めたセットを見たのは
これが初めてです。

パワートランス止めピン
混信対策
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このようなストレート受信機は、地元に放送局があると、混信のために遠方の放送を聞くのが
たいへんに難しいことがあります
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ラジオ少年は、”和歌山放送トラップ”をつないで、効果抜群です。
修理のご相談はお気軽にメール下さい。お見積もりもさせて頂きます。
uchita@jtw.zaq.ne.jp