究極の真空管アンプ?
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今回修理を頼まれたセットはラジオや蓄音機のためのパワーアンプです。
当時のラジオ用真空管は乾電池やバッテリーで動作しており
電灯線で電源を供給できるセットは未だありませんでした。
(UX-226,UY-227などの所謂エリミネータ球が発売開始されるのは1927年です)
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年代は1927年前後、日本でもラジオ放送が始まっていました。
”鉱石ラジオ”や真空管を1〜2本使ったラジオ受信機が普及をはじめていましたが、
アメリカから輸入した高級受信機は1000円前後もしていました。
公務員の初任給が75円、3食付きの下宿が一ヶ月25円〜30円の時代です。
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このセットは、家庭用に蓄音機やラジオの音を拡大して
大音量で鳴らすためのアンプだと思われます。
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プリアンプは当時最も普及していたUX-199
トリュームタングステンのフィラメントで3.3ボルト60ミリアンペアの球です。
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大切な出力球は、当時の家庭用球としては最大だったと思われるUX-210です。
この球はその後ST球に新化して21世紀の現在でも”10”の型式で
真空管オーディオのファン達に愛用されています。
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RCA Victor 210 シングルアンプ Model No. AP-997-C

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左側に並んでいるのはUX-199フィラメントを直流点火するための抵抗です。
約500ボルトもある”B"電源を抵抗でドロップして 3.3V、60mA のフィラメントに供給しています。
物量の国アメリカならではの設計だと感心してしまいます。
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配線を辿って回路図を再現しました。
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全く偶然に同じ型式のセットに採用された、後期モデルのアンプが修理のために入院してきました。
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プリアンプは新登場のエリミネータ球のUX-226に変更され、
出力球は、これも新登場のUX-250に変わっていますが基本的な構成は同じです。
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siriaruNo.2600番以降のアンプ

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回路構成は前期モデルと同じですが、UX-199フィラメントを点灯するためのドロップ抵抗が無くなり
少しすっきりとしているようです。
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古いセットが故障で眠っていれば、修理の可能性についてご相談に応じます。
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